聚義録

毎月第1・3水曜日更新

読書案内

『水滸伝』本文校勘の意義:小松謙『水滸傳と金瓶梅の研究』

小松謙氏は『水滸伝』テキストの校勘の意義について次のように述べます。 『水滸傳』の諸本間に多くの本文異同があることは周知の通りである。いわゆる繁本と簡本が大きく本文を異にすることはいうに及ばないが、繁本・簡本同士の間にあってもかなりの異同が…

金文京『三国志演義の世界【増補版】』

今回は『水滸伝』ではなく『三国志演義』に関する書籍を紹介します。金文京『三国志演義の世界【増補版】』(東方書店、2010)は白話小説を研究する者の必読書(私はそう教わりましたし、私もそう思います)で、私は学部生時代に本書からさまざまな研究手法…

盛巽昌補証『水滸伝補証本(増訂版)』

今回は盛巽昌補証『水滸伝補証本(増訂版)』(上海書店出版社、2019)という書籍を紹介します。 本書の内容を簡潔に言えば、『水滸伝』の内容について注釈を付け、その典故や関連事項を解説したものです。例えば、第一回の冒頭にはこのように注釈が付けられ…

大木康『中国明末のメディア革命』を読む(2)

前回に引き続き、大木康『中国明末のメディア革命』(刀水書房、2009)の第1章「中国書籍史における明末」を読んでいきます。今回は明代の話に入ります。 ●明代、嘉靖・万暦期の大変化(pp.28-31) 大木氏は、漢籍の総合目録である楊縄信『中国版刻綜録』を…

大木康『中国明末のメディア革命』を読む(1)

今回からは、大木康『中国明末のメディア革命 ―庶民が本を読む―』(刀水書房、2009)の中から、第1章「中国書籍史における明末」を読んでいきたいと思います。ちなみに、本書の前段階的な書籍として『明末江南の出版文化』(研文出版、2004)がありますので…

小松謙『詳注全訳水滸伝』

今年8月、汲古書院から、小松謙氏の『詳注全訳水滸伝』第1巻が刊行されました。購入予約していたために刊行された翌日には手元に届き、開いた瞬間、「あぁ、これはとんでもない大著が出たぞ」と確信しました。そこで今回は本書の特徴を紹介した上で、僭越な…

周勛初著/高津孝訳『中国古典文学批評史』(3)

今回も周勛初著/高津孝訳『中国古典文学批評史』第十章「李贄と金人瑞の小説理論」(pp.419-433)の続きを読み進めていきます。前回は李卓吾の小説理論について論じた部分を読みましたが、今回は金聖嘆のパートに移ります。今回は、過去の記事で触れた内容…

周勛初著/高津孝訳『中国古典文学批評史』(2)

さて、今回は前々回の記事の続きで、周勛初著/高津孝訳『中国古典文学批評史』を読んでいきたいと思います。第十章の「李贄と金人瑞の小説理論」(pp.419-433)を読み進めていきます。李贄とは李卓吾、金人瑞とは金聖嘆のことです。本書のこの章は李卓吾と…

周勛初著/高津孝訳『中国古典文学批評史』(1)

さて、今回からは周勛初著/高津孝訳『中国古典文学批評史』(勉誠出版、2007)を読んでいきたいと思います。本書は書名の通り、中国文学批評史を概説したもので、高津氏が原著の周勛初『中国文学批評小史』を翻訳したものです。本書は版元品切れになってお…

歴代の『水滸伝』関連資料を調べるには

今回は中国における歴代の『水滸伝』関連資料を集めた本をご紹介します。今から紹介する本には『水滸伝』の各版本に関する資料はもちろんのこと、物語に登場する人物の史実の記録や、小説批評、戯曲や続書など、『水滸伝』に関するあらゆる記述・著作が収め…

中国の『水滸伝』研究史を知るには

今まで私が紹介した本は、日本で出版された『水滸伝』関連図書ばかりでした。しかし当たり前ですが『水滸伝』研究が最も盛んな国は中国です。『水滸伝』を本格的に研究したいという方にとっては、日本国内の研究動向を追うだけでは不十分なのです。CNKIとい…

『水滸伝』人物事典を楽しむ

『水滸伝』の魅力の一つとして登場人物の豊かさが挙げられます。梁山泊の好漢だけでなく、奸臣や悪女など魅力的な個性を持った人物が沢山登場します。でも、登場人物の多さ、人物関係の複雑さが時に作品を読むハードルを上げてしまいかねないというのも事実…

初学者向け『水滸伝』関連図書2:佐竹靖彦『梁山泊 水滸伝・108人の豪傑たち』(5)

前回の続きです。今回も佐竹靖彦『梁山泊 水滸伝・108人の豪傑たち』(中公新書、1992)の第五章第五節「大豪傑への道」(pp.91-95)を読んでいきましょう。 宋江は、閻婆惜を殺して江州の牢獄に送られるが、ここで自分の反逆の志をのべた漢詩を作ってその素…

初学者向け『水滸伝』関連図書2:佐竹靖彦『梁山泊 水滸伝・108人の豪傑たち』(4)

前回の続きです。今回も佐竹靖彦『梁山泊 水滸伝・108人の豪傑たち』(中公新書、1992)の第五章第四節「宋江の弟、鉄扇子宋清」(pp.87-91)を読んでいきましょう。 宋江の弟宋清は父の宋太公と共に田舎で農業をして暮らしています。宋清は特に大きな活躍を…

初学者向け『水滸伝』関連図書2:佐竹靖彦『梁山泊 水滸伝・108人の豪傑たち』(3)

前回の続きです。今回も佐竹靖彦『梁山泊 水滸伝・108人の豪傑たち』(中公新書、1992)の第五章第三節「宋江の綽名、呼保義の意味」(pp.84-86)を読んでいきましょう。 閻婆惜殺しのエピソードに続いて、佐竹氏は宋江の綽名「呼保義」から宋江像の原型を探…

初学者向け『水滸伝』関連図書2:佐竹靖彦『梁山泊 水滸伝・108人の豪傑たち』(2)

前回の続きです。今回も佐竹靖彦『梁山泊 水滸伝・108人の豪傑たち』(中公新書、1992)の第五章第二節「喜劇的悲劇の主人公黒矮三郎宋江」(pp.80-83)を読んでいきましょう。 佐竹氏は高島俊男氏・宮崎市定氏の述べるような宋江像に疑問を抱き、宋江像の原…

初学者向け『水滸伝』関連図書2:佐竹靖彦『梁山泊 水滸伝・108人の豪傑たち』(1)

今回も比較的手に取りやすい『水滸伝』関連図書を紹介したいと思います。 今回紹介するのは佐竹靖彦『梁山泊 水滸伝・108人の豪傑たち』(中央公論社(中公新書)、1992)です。佐竹氏は東洋史研究者ですが、『水滸伝』に関する論文も数本出しています。他の…

初学者向け『水滸伝』関連図書1:井波律子『中国の五大小説』(2)

前回に引き続き、井波律子氏の『中国の五大小説』(岩波書店(岩波新書)、2009)の「はじめに」の続きを読んでいきましょう。 いずれにせよ、『水滸伝』もまた『演義』や『西遊記』と同様、初回から最終回まで、一回ずつ区切りながら、鎖状に回を連ね語りす…

初学者向け『水滸伝』関連図書1:井波律子『中国の五大小説』(1)

本ブログの最初の記事は、初学者向け『水滸伝』関連図書を紹介しようと思います。「そもそも『水滸伝』って何なの?」「少しは知ってるけど詳しくは…」といった方でも比較的取っ付きやすく、粗筋を知るのに有用な本があります。 非常に著名な中国古典文学研…